近年メディアに取り上げられる機会も増えた不登校。小学生、中学生を中心に不登校児童生徒数は増加傾向にあります。不登校の子供を抱える親御さんは「不登校の原因や解決策が見出せず、どうしていいか分からない」という悩みを多く抱えています。今回は、フリースクール伊藤幸弘塾塾長・佐野英誠(さの ひでのぶ)が原因・解決策を徹底解説します。
不登校の児童の更生に17年以上携わってきた経験を元に具体的な部分までお伝えしますので「子供の不登校を何とかしたい」「不登校の原因を知りたい」「不登校解決策のアドバイスが欲しい」という親御さんは必見です。
目次
不登校とは?
文部科学省により「不登校児童生徒」の定義付けがなされています。
「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」
引用元:令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(文部科学省)
不登校児童の実態
不登校児童は年々増え続けており、深刻な問題となっています。学校内外の機関で相談するケースも年々増えており、いかにして不登校のお子さんと向き合うか」が親御さんには求められています。
令和2年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、小中学校の不登校生徒児童生徒数は、中3を除いて 平成30年から3年連続増加傾向。
学校内外の機関等で相談・指導等を受けた不登校児童生徒は約12万9千人、令和2年時点で年々増え続けています。また、不登校児童生徒のうち平成28年〜令和2年で平均約72パーセントの生徒が、学校内外の機関で相談・指導を受けています。
引用元:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/03070701/002.pdf
不登校生徒によくある性格、近年の児童の精神的傾向とは
どのような児童が不登校になりやすい?
佐野塾長「最近のお子さんは感受性が強く、心が繊細な傾向』にあります。何か日常生活で問題があると、毎回心に大きなヒビが入ってしまうことがあります。最近は“不登校気質”に当てはまるお子さんが多いです。自分に自信がなく、学校などで『周りにいいように見られたい』『変に思われてはいけない』と過度に感じてしまう子もいますね」
知っておきたい不登校児童気質
- プライドが高い
- 気が弱い
- 感受性が強い
不登校の原因は?
フリースクールに相談に来る児童のケースを含め、不登校の考えられる原因をいくつかご紹介します。原因は複合的に絡むことも多く、十人十色の理由があります。そのため、児童一人ひとりの特性を理解し、コントロールできるようにしてあげることが必要です。
学校がつまらない
学校が楽しくない、面白くないからという理由で不登校になる児童もいます。学校で起こった話を傾聴できる親御さんが少なく、気づけば不登校になってしまうケースも多いです。
学校での人間関係
いじめ及びいじめを除く友人関係をめぐる問題 は1つの大きな原因となっています。最近は“ゲーム依存”が深刻化しており、ネットを離れ、リアルの人間関係になるとアクシデントが起こってしまいます。人間関係を構築する力やコミュニケーション不足が顕著な要因です。
引用元:令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(文部科学省)
SNSでのトラブル
LINEやInstagramなどSNSの発展により、以前にはなかった形でいじめが生まれ、不登校になる児童も増えています。
具体的にどのようなSNSトラブルなどがあるか?実際のケースを教えてください。
佐野塾長「LINEで言えば、自分の顔の写真がグループや他人のプロフィールに使われてしまい、それがSNSでのいじめに発展することもあります。ただのいじりでやっているつもりの場合もありますが、当事者にとってはきつい時もあります。他には学年のグループLINEに入って、良かれと思って発言したところ『頑張りすぎじゃね』と言われてしまい、その一言に萎えてしまって退学することになった生徒もいます」
親子関係のトラブル
令和2年度の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」において、全体の14.6パーセントを占めるのが親子の関わり方です。
引用元:https://www.mext.go.jp/content/20201015-mext_jidou02-100002753_01.pdf
親子関係が悪くなる原因は?
佐野塾長「最近は家の中ででも、親子はLINEで会話したりしばらく話していないケースも多い。特に夫婦間のトラブルやクレームの様子を子どもに見せてしまうことは、大きな親子関係トラブルの原因です。一度親子関係が壊れてしまっても『時が経てば大丈夫』と楽観的に捉えてしまい、気づけば手遅れになることもありますね」
生活リズムの乱れ
親子関係同様大きな原因(全体の14.0パーセント)となっているのが「生活リズムの乱れ、あそび、非行」です。以前は、夜遊びをして警察沙汰になることが非行少年でしたが、近年はネット上での非行が目立ちます。
引用元:令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要(文部科学省)
生活習慣が乱れる主な理由は?
佐野塾長「ゲーム依存は大きな理由です。多くの児童が好き放題の生活をし、ゲームに熱中するあまり生活習慣が乱れてしまいます。徹底したインターネットやゲームと向き合う教育がないと依存してしまう。10代のうちに徹底的に教えないといけないです」
どうすれば不登校にならない?
複合的な原因から生じる不登校ですが、親御さんに出来ることはあります。お子さんとの向き合い方、育て方の工夫で不登校を事前に防ぎ、自立した社会人に育てることが親の使命です。親の教育における大切なポイントを解説します。
親の「過干渉」が一つの要因かも
「過干渉」は親から子に対する過度な干渉を指します。子どもが痛い目に遭わないように、先回りをして勝手に面倒を見てしまうことで、自主性が育まれず、自身の力で人生を切り拓くことができなくなります。
どのような際に親は過干渉になってしまう?人生においてのデメリットは?
佐野塾長「例えば雨が降りそうな時、親は勝手に子供のリュックに傘を入れてしまい、自主的に生活ができなくなります。僕はびしょ濡れになってでも、意思選択の中で学ぶことが必要だと思います。今の子供たちは『親に水泳をやらされていました』などと言う子が多いです。そのようなことが続けば、自分の責任でなく第三者のせいにして、壁ができた時に突破する力がなくなってしまう。子供が親に『大丈夫、俺はできるよ』という姿を見せるサイクルに、教育を展開していかないといけないです」
親として”愛”を持ち、想いを伝える
最近の親はすぐに子どもに謝ってしまう傾向があります。例えば、子どもに「学校に行きなさい」と勇気を持って伝えたとしても「うるせえ」の一言で、逆に親が言い返せなくなってしまう。その子どもにとっては良くない成功体験が生まれてしまい、その連鎖から不登校が続いてしまいます。親として”愛”を持ち、想いを伝えることが重要です。
どうすれば親子間の負の連鎖を抜け出せる?
佐野塾長「人間味と熱意を込めて伝えれば、子供達の心を動かすことができます。本当に愛を持って伝えれば、伝わらない子はいないと思います。諦めない大人の姿勢を見せることが大切です。親の毅然たる姿勢が覚悟が低下していて、気持ちを込めて熱を込めて向き合える親も少なくなってきています。親の発言で子供を『確かにそうだな』と納得させて、導いてあげるロジックが必要です」
不登校の原因が分からないときはどうしたらいい?
親御さんの子供に対する向き合い方で、不登校や親子関係は改善できます。しかし「なかなか子供に伝えられない」「そもそも不登校の理由が分からない」という悩みをお持ちの親御さんは、行政機関やフリースクールへ相談、第3者の意見を聞くことも一つの解決策です。
行政機関への相談
行政や市役所に不登校引きこもり支援窓口が設けられています。 厚生労働省のホームページには、児童相談所、児童相談センター、児童家庭支援センターやひきこもり地域支援センターの情報が掲載されています。
引用元:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/consultation/window/window_02.html
フリースクールへの相談
不登校になった根本原因を探り、自主性を重んじる教育に変化させることで、改善する場合があります。行政に不登校引きこもり支援窓口が設置されていますが、相談に来られた中で対応できたのが全国で100パーセント中8パーセントです。目的意識を持ち、第3者に相談しつつ幼少期からの家族構成、ライフスタイルなどを見直して改善することが必要です。
伊藤幸弘塾では、お子様に合わせたカリキュラムを作成し、家庭に近い環境での生活を行います。児童の自主性を育み、生活リズムや学業意欲向上を心がけ、ゆくゆくは社会復帰・学業復帰を目標とします。人間関係のトラブル解決方法を身につけることもできます。
佐野塾長のメッセージ
「親御さんは第3者に預けることで『育児放棄した』と思ってしまう方も多いです。不登校を見て見ぬ振りしている方もいらっしゃいますが、放っておくと長く不登校になってしまいます。『お子さんを幸せな方向へ導くためにはほっとけない』ということを伝え、変わるきっかけを作って欲しいです。お子さんに『引きこもり、不登校にさせるわけにはいかない』と言ってほしいです。それが愛だと思います。私は17年間携わってきており、熱意を込めて伝えたら、子供達の心を動かせる自信があります。ぜひ勇気を持って相談をしていただきたいです」
・佐野英誠(さの ひでのぶ)塾長プロフィール
母子家庭で育ち、いじめ、不登校、引きこもりを経験するが、小中高の7年間はバスケットボールに打ち込む。高校2年生でコーチとのトラブルで退学、その後は喧嘩に明け暮れ、暴走族やチーマーとして荒れた生活を送る。26歳の時、新幹線で近くに座っていた教育カウンセラーの伊藤幸弘と運命的な出会い。修行を積み、2017年に伊藤幸弘塾塾長となる。以降は不登校、引きこもり、ゲーム依存、スマホ依存、ネット依存の子どもたちを、365日24時間体制の全寮制で支援し、家族関係の再構築をサポートしている。21年には、自身の経験を踏まえた書籍『ゲーム依存から子どもを取り戻す』を出版、Amazonランキング1位を獲得した。