中学生の不登校は、何が原因で起こるのでしょう。
この記事では、中学生の不登校の定義やその割合、具体的な原因と影響について詳しく解説します。
また、不登校になりそうな初期のサインに気づくためのポイントや、実際に不登校になった際の対応方法、親としてできるサポート方法についても紹介。不登校による高校進学への影響や、避けるべきNG行動についてもお伝えします。
中学生の不登校の原因について知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
目次
中学生の不登校の定義と割合
中学生の不登校は、学力だけでなく発達段階における人格形成でも大きな影響を与えます。現代の日本社会において、右肩上がりに増加している深刻な問題となっています。
この章では、中学生の不登校の定義とその割合について詳しく説明します。
- 中学生の不登校の定義
- 中学生の不登校の割合
ぜひ参考にしてください。
中学生の不登校の定義
日本においての不登校の定義を覚えておきましょう。
文部科学省は不登校を以下のように定義しています。
「不登校児童生徒」とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの
つまり、「病気や経済的な理由で学校に年間30日以上欠席している人」が不登校の子ども、ということになります。
中学生の不登校の割合
不登校の中学生の割合は年々増加傾向にあります。文部科学省の発表では、全国で約19万人(193,936人)の中学生が不登校状態にあると報告されています。
これは、中学生全体の5.98%にもなる数字です。日本における一クラスあたりの中学生の生徒数は基本40人とされているので、一クラスに約2人は不登校の生徒がいるという状態になっています。不登校は身近な問題といえるでしょう。
参考:令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
小学生の不登校の生徒の人数は約10万人(105,112人)のため、中学生は小学生の約2倍も不登校になりやすいといえます。これは小学生よりも中学生のほうが環境や本人の変化が大きく、特に進学した直後の中学一年生はいじめや不登校といった問題が増えやすくなる、「中一ギャップ」の問題も出てきます。
中学生の不登校の主な原因は、次の章で紹介します。
中学生の不登校の主な原因
不登校の原因は複数の要因が絡み合っていることが多く、一概に断定することはできませんが、大きく分けて以下の3つに分類できます。
- 学校の問題
- 家庭環境の問題
- 本人の問題
それぞれの原因について詳しく見ていきます。
学校の問題
学校の問題が不登校の原因となる場合、教師やクラスメートとの人間関係が大きな影響を与えることが多いです。たとえば、いじめや仲間外れ、授業についていけない、先生との相性が悪い場合などが挙げられます。また、進学に対する不安も原因の一つです。
中学生になると心と体が大きく変化し、得意なことや不得意なことがわかれていきます。自分の好きなことや得意なことを伸ばして自己実現できると良いのですが、必ずしも思うような成果が出るとは限りません。
学業や部活動の成果が出ないことや、人間関係の難しさに気づいて学校生活を楽しめないときに、誰にも相談できずに苦しい思いを抱えたままだと、次第に登校を避けることがあります。
家庭環境の問題
家庭環境の問題も重要な要因として挙げられます。子どもにとって家が安心する場でないことや、家族(特に両親)の不仲などが不登校の原因になることがあります。また、親の過干渉、逆に無関心も子どもにとって大きなストレスとなります。
特に、親が子どもに対して完ぺき主義すぎる場合、そのプレッシャーが子どもの心に重くのしかかります。家庭内でのコミュニケーション不足もまた、子どもが学校に通うことを困難にする要因の一つです。
不登校になりやすい家庭や親の性格の特徴については、以下の記事でまとめているので、参考にしてください。
本人の問題
中学校に進学し、環境の変化や学習内容の変化に馴染むことができず、様々な問題が増加する現象を「中一ギャップ」と言います。小学生のころよりも、精神的な健康や性格、考え方などが本人の問題として大きく影響するからでしょう。
自分自身のことや将来のことを考えたとき、今の自分に納得ができず上手く相談できずにいると、より一層辛くなってしまうでしょう。自己肯定感が下がり、生きづらさや自信が持てなくなり、無気力になってしまうことが不登校の要因の一つでしょう。
さらに、近年では起立性調節障害やHSCも原因として挙げられます。これらは、本人の努力だけでは学校の環境に適応することを難しくさせます。同様に、発達障害や発達特性といった一人ひとりの特性に合わせた適応が求められます。
不登校による精神的な影響
不登校は、子どもやその家族に多大な精神的影響を及ぼします。まず、不登校の子ども自身が感じる孤独感や自己嫌悪は深刻なストレスの原因となります。
また、将来への不安や社会からの孤立感も強まり、精神的な負担が増すことが多いです。「学校へ行かないといけない」と思っているのに、行けない自分にストレスを感じるかもしれません。
特に、長期間にわたって不登校が続く場合、その精神的影響は深刻なものになります。人と長く関わらないことで、人に会うことやどう思われているかの不安がかき立てられてしまいます。友人との繋がりが切れたり、精神疾患を患ったりなど二次的な問題も出てくるため、早期の対策やサポートが重要になります。
不登校による高校進学への影響
不登校は高校進学に大きな影響を及ぼしやすいです。それに伴い、進学先の選択肢が制限されることもあります。具体的には、以下の2点です。
- 内申点
- 学力
それぞれ解説していきます。
内申点
不登校が続くと、授業に出られないため内申点が低くなる恐れがあります。内申点は出席日数や授業態度、小テスト、提出物などといったものが大きく影響し、登校している生徒に比べて評価が低くなることがあります。
学校側も生徒の状況を考慮することがありますが、一定の基準を満たさない場合には厳しい評価が下されることがあります。また、特に公立高校では内申点が入試の合否に直接影響するため、不登校による内申点の低下は進学先選びに大きな影響を与えます。
内申点は内申書または調査書に記載されます。
学力
不登校が続くことで、学力低下が顕著になる場合があります。授業に出席できないと、教科内容をきちんと理解するのが難しくなります。特に、数学や英語など積み重ねが重要な教科では、一度学習の遅れが生じると取り戻すのが困難になることが多いです。
そのため、テスト結果も低下し、自己評価が下がるという負のスパイラルに陥ることがあります。学力の低下は進学後の学校生活にも影響を及ぼし、高校進学後も学習の遅れを感じることが懸念されます。
そのため、不登校の期間中でも家庭学習やオンライン学習などでできる限り学力維持に努めることが重要です。
親が気づくべき初期のサイン
不登校の初期には、子どもの行動や言動にいくつかの兆候が現れることがあります。たとえば朝起きるのが遅くなる、学校の話題を避ける、体調不良を訴えるなどが挙げられます。
また、好きだったことへの興味を失ったり、友達との交流を避けたりすることもサインとなります。親としては、これらのサインを早期に察知し、子どもとしっかりコミュニケーションを取ることが求められます。
不登校になった子どもの対応方法・親ができるサポート
中学生が不登校になった場合、早期の対応が大切です。
具体的には、以下の方法が有効です。
- 学校と連携する
- 家庭の問題を解決する
- 親子で会話をする
- フリースクールに通学する
一度に問題を解決しようとせず、少しずつ前進することが子どもの回復につながります。
学校と連携する
不登校の子どもを支援するためには、学校との連携が欠かせません。
中学校は教科担任制のため、担任の先生が一番子どものことを知っているとは限らない場合があります。
生徒指導や教育相談担当の先生、養護教諭や部活の顧問など、子供の学校での事情に詳しい先生を探してみてはいかがでしょう。
その上でスクールカウンセラーに相談し、専門的な子どもの状態や心の変化について共有したりアドバイスをもらうのがいいでしょう。
また、学校側にもどのような支援が受けられるのかを確認し、具体的な対策を講じることが重要です。教室に入らなくても受けられるオンラインによる授業体制を依頼したり、適応指導教室に通うなど、学校によっては独自の支援やサポートがある場合があります。
家庭の問題を解決する
家族の中で意識すべきは、「家庭が子どもにとって安心できる場所であること」です。家庭内の問題が原因で不登校になっている場合、それを解決することがまず第一です。たとえば、夫婦間の不仲も子どもに悪影響を及ぼすため、夫婦間の問題を解決することも求められます。
家庭が安定することで、子どもの学校に対する不安を軽減しやすくなります。
他にも不登校になりやすい家庭の特徴はあるため、対策は以下の記事を参考にしてください。
親子で会話をする
子どもとのコミュニケーションは、不登校から回復するためには、非常に重要です。親子で定期的に会話をし、子どもの気持ちを丁寧に聞く姿勢を持ちましょう。無理に学校の話題を持ち出すのではなく、子どもが話したいと思うトピックについて話し合うことが大切です。
また、子どもが感じている不安や悩みを理解し、一緒に解決策を見つける姿勢を見せることで、子どもも安心して心を開くことができます。家族で楽しい時間を過ごすことで、子どもの心が癒され、自信を持つことができるようになります。
フリースクールに通学する
再び学校生活に戻ることが難しい場合には、フリースクールへの通学を検討してみるのも一つの手です。フリースクールは一般的な学校とは異なり、子ども一人ひとりのペースで学習を進められます。
また、フリースクールでは子どもの心理的なサポートもおこなっており、対人関係や自己肯定感の向上に役立つプログラムが用意されています。フリースクールを利用することで、子どもは再び学習意欲を取り戻し、社会参加の第一歩を踏み出せます。
中学生が不登校になったときのNG行動
中学生が不登校になることは、親としては非常に心配なことです。しかし、その際に取る行動には注意が必要です。
不適切な対応は、子どもに逆効果をもたらすこともあります。ここでは、中学生が不登校になったときに避けるべきNG行動について説明します。
- 無理やり学校に行かせようとする
- 親が自分を過度に責めすぎる
適切な対応を考えるために覚えておきましょう。
無理やり学校に行かせようとする
子どもが不登校になった場合、親としては学校に戻すことを最優先に考えるかもしれません。しかし、話も聞かずに無理やり学校に行かせようとする行動は避けましょう。無理やりの行動は、子どもにさらなるプレッシャーを与えるだけでなく、学校に対する恐怖感や嫌悪感を増幅させる恐れがあります。
何より家庭内不和がおきて、家庭内での子供の居場所がなくなってしまうでしょう。
まず、子どもがなぜ学校に行けなくなったのか、その理由を理解することが重要です。理由はさまざまで、いじめ、学業のプレッシャー、人間関係の問題、家庭内の問題などがあります。その理由を把握し、子どもの気持ちに寄り添ってあげましょう。
無理に行かせるよりも、子どもの気持ちを大切にし、話を聞くことから始めてください。
親としての態度も重要です。子どもが安心して自分の気持ちを話せる環境を整えること、無理に学校に行かせるのではなく、子どものペースに合わせて一緒に解決策を探していく姿勢が大切です。
親が自分を過度に責めすぎる
中学生が不登校になった場合、親は自分を責めることが多いでしょう。「自分が悪かったからだ」「もっと早く気づくべきだった」といった後悔の念に駆られることがあるかもしれません。しかし、親が自分を過度に責めすぎることは、子どもにさらに悪影響を与える恐れがあります。
まず、親が自分を責めることで精神的に疲弊し、その結果、子どもに対してネガティブな態度を取ってしまうことがあります。たとえば怒りっぽくなったり、イライラしたりすることで、子どもがさらに不安を感じ、家族関係が悪化する恐れがあります。親が心身ともに健康でいることが、子どもにとっても重要です。
次に、親が自分を責めることで、子どもにも「自分のせいで親が苦しんでいる」と感じさせてしまう場合があります。これが子どもにとっては大きな負担となり、ますます心の壁を厚くしてしまうかもしれません。自分を責めるよりも、前向きな姿勢で子どものサポートを考えることが重要です。
親が自分を責めることを避けるための具体的な方法としては、まず自分の感情を正直に認めることが挙げられます。そして、感情のコントロール方法を学ぶことや、ストレスを解消する方法(趣味や運動、友人との交流など)を見つけることが役立ちます。
子どもが苦しんでいるのに、親の自分が楽しんでもいいのか悩み、気晴らしをしたり楽しみを持ったりすることを敬遠してしまうことがあります。
子どもと向き合うエネルギーを貯めるためにも、親が安定していることが必要で、同じような悩みを持つ親との交流や、専門家のアドバイスを受けることも効果的です。
中学生が不登校になる原因と対応方法を覚えましょう
中学生の不登校は、学校の問題、家庭環境の問題、本人自身の問題といった多様な原因が複雑に絡み合って引き起こされる現象です。その結果、中学校生活だけでなく、高校進学やその後の人生への影響が出ることも少なくありません。
中学生が不登校になった場合、具体的な対応方法や親のサポートには、以下のような方法があります。
- 学校と連携する
- 家庭の問題を解決する
- 親子で会話をする
- フリースクールに通学する
具体的な対応方法
子どもが再び学ぶ意欲を取り戻すことが期待されます。
一方で、無理やり学校に行かせようとしたり、親が自分を過度に責めたりする行為は避けるべきです。それらの行動は逆効果となり、子どもの心にさらなる負担をかけます。適切なサポートと理解を持って対応することが、不登校の解決に向けた第一歩です。
親子で力を合わせ、子どもが再び笑顔で学校生活を送れるよう、努めていきましょう。この経験を通じて、家族全員が成長できる機会と捉えることも大切です。
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監修者:渡部和樹
臨床心理士・公認心理師渡部和樹ワタナベカズキ
こどもの発達障害の支援を続けながら、精神科病院や福祉施設にて心理師として勤務していた。その後、民間の私設相談機関を開業し、10年となる。現在は開業前から取り組んでいたスクールカウンセラーとしての勤務を続けつつ、公的機関などから研修や講演依頼を多く受けている。
学校現場において、年々不登校の数は上昇傾向にあります。私もスクールカウンセラーとして15年学校で勤務していますが、ここ最近はまた大きく変貌しているように感じます。
不登校を家庭の問題、学校の問題と切り分けて考えていく時代から、それぞれの立場が一丸となって子どもを支援する時代となりました。そこに民間の企業や支援施設が参入し、より子どもたちの力になれる人たちが増えたのではないでしょうか。
近年は、フリースクールの数も増え、学校と協力して不登校の改善に取り組んでいる現場を私も見ています。子どもたちのより良い成長のためにも、協力する大人が増えることは喜ばしいことですね。