不登校は子どもにとっても、親にとっても深刻な問題です。
子どもたちが学校に行けなくなる背後には、さまざまな原因があります。
この記事では、子どもの不登校の主な原因についてお伝えします。
不登校とひきこもりの違いや、不登校の前兆について理解することは、早期に対策を講じるために非常に重要です。
また、不登校を解決するための具体策も紹介します。親として何をすべきか、そして避けるべき行動について覚えておきましょう。
不登校の原因を正確に知っておくことで、問題が発生する前に予防しやすくなるでしょう。
それでは、その具体的な内容について詳しく解説していきます。
目次
子どもの不登校の主な原因
不登校の原因は多岐にわたっており、複数の要因が絡み合って発生することが多いです。
この章では、主要な原因について詳細に解説します。
- 家庭環境の影響
- 学校環境の問題
- 健康上の問題
- 遊び・非行
- 無気力・不安
- 甘えたがり
それぞれの要因がどのように不登校につながるのか、説明していきます。
家庭環境の影響
家庭環境は不登校の主要な原因の一つとなります。たとえば、親の離婚や引っ越し、両親の不仲が続く状況では、子どもが心理的に不安定になり、登校意欲を失うことがあります。
また、過度な期待や厳格な教育方針がかえってプレッシャーとなり、子どもにストレスを与えるケースも見られます。極端に無関心であったり、反対に過干渉であったりすると、子どもの安定した発達を阻害してしまいます。
家庭内での心地よい環境作りが、子どもが安心して学校に通うためには欠かせません。
家庭環境については、以下の記事も参考にしてください。
学校環境の問題
学校環境における問題も、不登校の大きな原因として挙げられます。同級生や他学年とのトラブル、いじめが原因など、「人間関係の難しさ」から学校に行きたくなくなるケースは多いです。
また、学習の不安は子どもたちにとって大きな問題になります。思っていたよりも成績が伸びないことや、自分だけがわからないと思ってしまうと、途端に恥ずかしさを感じ、自信を失います。実際にされていなくても、「周りから馬鹿にされるかもしれない」といった心配事は、授業を受ける毎に大きなストレスとなるでしょう。
そうしたストレスが蓄積すると、やがて学校に対する恐怖心や嫌悪感が芽生え、不登校につながります。
健康上の問題
健康上の問題も、不登校の原因になることがあります。たとえば子どもに多い精神的な問題としてうつ病や不安症があり、登校するのに配慮が必要となる場合があります。同様に、先天的な発達障害などは、子ども一人ひとりに合わせた配慮がなければ、登校意欲を減退させる要因となります。
こうした健康問題に直面している子どもには、家庭や学校の協力だけではなく、専門的な医療やカウンセリングのサポートが欠かせません。健康問題を解決するには、家庭や学校、医療機関が一体となって支えていくことが重要です。
また、昼夜逆転した生活を送ってしまい、生活リズムの乱れによって朝が起きられずに不登校になる子どももいます。生活リズムはすぐに直らないこともあるため、乱れている場合は、徐々に改善していくことが求められるケースもあります。
遊び・非行
遊びや非行が原因で、不登校になる子どももいます。
たとえば、本来学校に行く時間にもゲームや動画を見て過ごすことがあります。多くの場合、深夜までそれらを続け、起きられずに学校を休み、その後ゲームや動画を再開することを繰り返します。
また、スマホを使ってSNSを通して、学校以外の友人と付き合う可能性が増えることがあります。相手によっては反社会的な振る舞いをしたり、非行を行ったりする集団と関わるようになると、その影響で学校から離れるケースも見られます。
家庭でのルール設定や学校での指導が重要ですが、それ以上に子どもを孤立させなかったり、愛情をしっかり伝えたり、子どもが夢中になれる健全な趣味や活動を見つけることも大切です。
無気力・不安
無気力・不安も不登校の大きな原因の一つです。特に思春期の子どもに多く見られ、受験のプレッシャーや自己評価の低さが背景にあります。小学校卒業から中学校入学では「中一ギャップ」という言葉があるほど、特に注意が必要です。学校での学業や部活動、人間関係に疲れ切ってしまい、何事にも興味を持てなくなるかもしれません。
このような場合、子どもが登校を渋っているときに無理に学校に行かせるのではなく、まずは期間を決めて休息を取らせ、専門家のアドバイスを受けることが効果的です。再び登校できるように、家庭と学校、専門家が協力し合う必要があります。
甘えたがり
甘えたがりな性格も不登校の原因となりえます。苦手なことや面倒なことから逃げ出そうとしてしまい、登校するよりも家でゆっくりする方を選んでしまうかもしれません。
特に過保護な家庭環境で育つと、子どもは自分で問題を解決する力がつかず、依存が強くなります。学校で困難に直面したときに、自力で対処できず、結果として学校に行きたくなくなることがあります。
親は子どもの意志を尊重しすぎたときに、「こんなに嫌がっているなら行かなくてもいいんじゃないかと」つい甘やかして休ませてしまうことも影響します。親は適度に子どもの自立を促し、自己解決能力を育てることが大切です。
不登校とひきこもりの違い
不登校とひきこもりは、共通点が多いものの異なる現象です。
文部科学省は不登校を以下のように定義しています。
「不登校児童生徒」とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの
不登校は基本的に学校への出席を避ける現象であり、学業や人間関係の問題が原因となります。また、該当者は小中高生などに限られます。
一方、ひきこもりは、6ヶ月以上家庭にとどまる状態を指しています。学生かどうかは関係なく、この状態であれば子どもだけでなく、社会人でも引きこもりに該当します。
不登校の子どもが将来的にひきこもりになるケースもあります。
子どもの不登校の前兆
不登校は突然発生するものではなく、さまざまな前兆があります。これらの前兆を早期に察知することで、適切な対応が可能になります。
前兆は体と心の症状に分けられます。
- 体の症状
- 心の症状
順番に解説していきます。
体の症状
不登校の前兆として現れる体の症状は多岐にわたります。
まず、朝起きるのが困難になることが挙げられます。起きても着替えや学校の準備をせずに、頻繁に体調不良を訴えるようになることも前兆の一つです。たとえば頭痛や腹痛、吐き気など、特定の病気ではありませんが不快感を伴う症状が現れることがあります。これらは登校の時間が迫るほど強くなり、学校を休めると分かると次第に症状が改善していく場合があります。
さらに、食欲の変動も見られます。食欲不振により食事をとりたがらなくなったり、逆に過食に走ったりすることもあります。睡眠の質にも変化が現れることがあり、夜なかなか寝付けない、または深夜に突然目を覚ますといった問題が出てくるケースもあります。これらの体のサインに関しては、単なる言い訳と捉えず、慎重に観察することが大切です。
一見元気そうに見えても、頻繁に欠席や早退を繰り返すことも症状として挙げられます。これらの体の症状に対して、「この症状は危ない」とか「この症状なら大丈夫」と考えず、いつも違う子供の変化に敏感になり、早めに気づいてあげることが大切です。
心の症状
心の症状も不登校の前兆として重要なサインです。体の症状とは違い、一見すると目に見えないからこそ重篤するまで気がつかない場合もあります。
まず、以前は楽しんでいた活動や趣味への興味を失うことが目立ってきます。たとえば、部活動や友達との遊びに興味を示さなくなることが考えられます。さらに、無気力感や意欲の低下が見られ、何事にも取り組む気力がなくなる状況が続くことがあります。このような場合、子ども自身も自分の感情や考えをうまく表現できず、どうして学校にいけないのかも分からず、よりふさぎ込んでしまうことが多いです。
また、不安感や恐怖感が強まるケースも少なくありません。特に学校生活に対して不安を抱いている場合、登校前に強い緊張感を持ち、体の症状として出てくることがよく見られます。
これに伴い、過度な緊張やパニック発作が起こることもあります。親とのコミュニケーションが減少し、部屋に閉じこもる時間が長くなることも、心の症状として注意すべきポイントです。
さらに、ネガティブな考えばかり抱くようになり、自分を過小評価したり、将来への悲観的な見方が強まったりします。自尊心の低下や無力感を感じることが続くと、自己否定につながりやすくなります。他人との比較を過剰におこない、「自分はダメだ」と感じることが多くなり、その結果、学校や社会への参加意欲が減少することも多く見られます。
親がこれらの症状に気づき、早期に対応することが不登校の防止にとって非常に重要です。
具体的な解決先は、次章でお伝えします。
子どもの不登校の解決策
不登校は子どもにとって重大な問題であり、適切な対応が求められます。
単に学校へ戻ることだけを目標にせず、子ども自身の心と体の健康を最優先に考えた上で、さまざまな視点からの解決策が必要です。
ここでは、具体的な解決策として5つの方法を紹介します。
- 子どもと会話をする
- 子どもに好きなことをさせる
- 家庭環境の問題を見直す
- 学校と連携をとる
- フリースクールを活用する
一度にすべてをおこなう必要はありません。子どもの状況に合わせて試していきましょう。
子どもと会話をする
まずは、子どもとしっかりと会話をすることが大切です。その際、叱責や無理強いをするのではなく、子どもが何を感じ、何を考えているのかを理解する姿勢が求められます。
子どもが不登校に至る背景には、友人関係、学校の成績、教師との関係などさまざまな要素が影響している可能性があります。親としては、その一つひとつを丁寧に聞き取り、共感しながら解決策を一緒に考えることが重要です。
場合によっては子どもが何も語らなかったり、話したがらなかったりすることがあります。話す意欲がないときに、無理に話をさせようとすると逆効果です。親は話をしたいことや、いつでも待っていることを伝える必要があります。また無理に会話にこだわらなくても、手紙や、LINEなどのSNSで子どもとやりとりしてみても良いでしょう。
子どもに好きなことをさせる
不登校の子どもには、好きなことや興味があることを積極的にさせることが有効な場合があります。特に無気力になっている子どもはエネルギーを貯めるために必要です。
趣味や興味関心がある活動に没頭することで、子どもの自己肯定感が高まり、精神的なリフレッシュにもつながります。たとえばスポーツや音楽、絵画、読書など、子どもが楽しむことができるアクティビティを見つけてみましょう。
そして、その活動を通じて新たな友人や仲間を作ることも、社会性の発達に寄与します。また、このような活動は将来的に学校復帰のきっかけにもなることがあります。何より、子どもが楽しんでいる姿を見て親も安心できるはずです。
家庭環境の問題を見直す
家庭環境も不登校の原因になり得るため、その環境を見直すことは不可欠です。家庭内でのコミュニケーションの質や、親と子どもとの関係性を再検討することで、ストレスを軽減し、安心できる居場所を提供することができます。
また、親自身も自分のストレスや仕事の負担を軽減するための工夫をすることが大切です。
たとえば、家族全員がリラックスできる時間を設け、一緒に過ごすことができるアクティビティや食事の時間を大切にすることが考えられます。そうすることで、家族全員が心地よい環境を築くことができ、子どもも再び学校へ行く意欲を取り戻すかもしれません。
なお、子どもに家事のお手伝いをしてもらって、褒めるようにするのもおすすめです。子どもが「感謝された」「必要とされた」と思えて、自己肯定感が高まることが期待できるからです。自己肯定感が高まることで、学校へ戻りやすくなるでしょう。
学校と連携をとる
学校と連携することも重要な解決策の一つです。担任だけでなく、養護教諭や生徒指導、教育相談と密なコミュニケーションを取り、子どもの状況について情報を共有し合うことが必要です。状況によってはスクールカウンセラーに相談するなど専門的な助言を得ることで、子どもが抱える問題について理解し、柔軟に対応できるかもしれません。
具体的には、子どもの特性に合わせた学校生活の配慮、学業の進捗状況を考慮した特別なカリキュラムの提供、子どもが安心して学校に通えるようなサポート体制を整えることなどが考えられます。また、保護者自身も学校行事やPTA活動に積極的に参加し、学校との関係を強化すれば、子どもが学校に対して抱く不安を軽減できるでしょう。
フリースクールを活用する
フリースクールは、従来の学校教育とは異なる形で学びの場を提供する機関です。不登校の子どもにとって、フリースクールは新たな学びのチャンスとなります。
フリースクールでは多様なプログラムが提供されており、子どもの興味やペースに合わせて学べる環境が整っています。フリースクールに参加することで、同じような境遇の子どもたちと交流する機会も得られ、新たな人間関係を築くことができるでしょう。
親としては、具体的なフリースクールのカリキュラムや施設を事前に調査し、子どもに最適な場所を選ぶことが大切です。
子どもに合ったフリースクールを見つけられれば、子どもの成長や学びの可能性を広げる助けとなるでしょう。
不登校の子どもがいる親がとってはいけない行動
子どもが「学校に行きたくない」と言ったとき、親としてどのような行動を取るべきかは非常に重要です。誤った対応をすると、子どもの精神的健康を害するだけでなく、親子関係にも悪影響が及ぶ恐れがあります。
この章では、親が避けるべき行動について具体的に説明します。
- 無関心な態度を取る
- 学校に行きたくない理由を無理に聞く
- 無理やり学校に行かせようとする
- 子どもが嫌がることをさせる
それぞれ解説していきます。
無関心な態度を取る
子どもが学校に行きたくないと感じる理由は、複雑で多岐にわたっていることがあります。親がそのことについて無関心な態度を取ると、子どもは「自分の感情や困難は誰にも理解されない」と感じ、精神的な孤立感を深める恐れがあります。
無関心な態度は、子どもが親に対して信頼感を失い、将来的に重要な問題を共有しなくなる原因になることもあります。親は子どもの気持ちに寄り添い、積極的にコミュニケーションを取る姿勢を見せることが求められます。
まずは子どもの話をよく聞き、適切なタイミングでサポートやアドバイスを行うことが、問題解決の第一歩となります。
学校に行きたくない理由を無理に聞く
親として子どもの心配をするのは当然ですが、学校に行きたくない理由を無理に聞き出そうとする行動は逆効果になることがあります。無理に聞き出そうとすることで子どもは圧力を感じ、ますます口を閉ざしてしまう恐れがあります。
特にデリケートな問題や自分でも整理がつかない状況にある場合、無理に話させることはさらにストレスを与える結果となります。子どもが自ら話す意思を示すまで待つことが重要です。
それまでの間、親は安全で安心な環境を提供し、子どもに話す準備ができたときにサポートする姿勢を見せるようにしましょう。
無理やり学校に行かせようとする
子どもが学校に行きたくないと言ったとき、無理やり連れて行こうとすることは避けるべきです。無理強いすることで、子どもはますます学校に対してネガティブな感情を抱き、長期的には登校拒否や精神的な問題につながる危険性があります。
代わりに、学校と連携して問題の根本原因を特定し、対策を講じることが重要です。
たとえば、学校でのサポート体制を強化したり、フリースクールを活用したりするなどの対応が考えられます。また、親自身も子どもと一緒に適切な解決方法を模索し、子どもが安心して学校に戻れるよう支援することが求められます。
子どもが嫌がることをさせる
子どもが嫌がることを無理にさせることは、親子関係に大きな亀裂が生じる恐れがあります。特に、学校に行きたくないと感じている子どもに無理強いすることは逆効果となります。
嫌がることをさせることで、子どもは親に対して反発心を抱き、ますます心を閉ざしてしまい、登校できるきっかけを逃してしまうかもしれません。親は子どもの感情を尊重し、共感する努力をしつつ、問題解決に向けて一緒に取り組む姿勢を持つことが大切です。
不登校の子どもは心身ともに疲れていますので、まずは温かく支えてあげましょう。
子どもの不登校の原因を覚えておきましょう
不登校の問題は多岐にわたる原因から生じることが多いですが、主なものは以下のとおりです。
- 家庭環境の影響
- 学校環境の問題
- 健康上の問題
- 遊び・非行
- 無気力・不安
- 甘えたがり
不登校の主な原因
子どもが不登校になる前兆として現れる体の症状や心の症状に早期に気付くことが大切です。
解決策としては、以下のものがあります。
- 子どもと会話をする
- 子どもに好きなことをさせる
- 家庭環境の問題を見直す
- 学校と連携をとる
- フリースクールを活用する
解決策
親がとってはいけない行動として、次のことが挙げられます。
- 無関心な態度を取る
- 学校に行きたくない理由を無理に聞く
- 無理やり学校に行かせようとする
- 子どもが嫌がることをさせる
親がとってはいけない行動
不登校の問題を解決するためには、原因を正しく理解し、子どもへの理解と共感を持ちながら対応することが求められます。子どもの話をじっくりと聞いてあげましょう。最初はなかなか話をしてくれないかもしれませんが、子どもが頼ってくれるまで、根気よく寄り添ってみましょう。
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こどもの発達障害の支援を続けながら、精神科病院や福祉施設にて心理師として勤務していた。その後、民間の私設相談機関を開業し、10年となる。現在は開業前から取り組んでいたスクールカウンセラーとしての勤務を続けつつ、公的機関などから研修や講演依頼を多く受けている。
学校現場において、年々不登校の数は上昇傾向にあります。私もスクールカウンセラーとして15年学校で勤務していますが、ここ最近はまた大きく変貌しているように感じます。
不登校を家庭の問題、学校の問題と切り分けて考えていく時代から、それぞれの立場が一丸となって子どもを支援する時代となりました。そこに民間の企業や支援施設が参入し、より子どもたちの力になれる人たちが増えたのではないでしょうか。
近年は、フリースクールの数も増え、学校と協力して不登校の改善に取り組んでいる現場を私も見ています。子どもたちのより良い成長のためにも、協力する大人が増えることは喜ばしいことですね。